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免訴 [法律エッセイ]

他人の物を不法に領得すれば横領罪です。懲役5年以下の刑に処せられます(刑法252条1項)。この罪の公訴時効は、5年なので、横領したときから5年以内に公訴提起しなければ時効となり(刑事訴訟法250条5号)、起訴しても免訴という判決を宣告して裁判は終了です(刑事訴訟法337条4号)。横領した人から物を貰い受けたりすると、盗品譲受け等の罪になり、懲役3年以下の刑に処せられます(刑法256条1項)。そして、公訴時効は、さらに短くなり3年です(刑事訴訟法250条6号)。

事案の概要は以下のとおりです。

ある人が被告人にお金の持ち逃げをすることの誘いをかけました。被告人は、それに対し、明確に承諾することもなく、具体的な取り分の話をすることもなく聞いていました。事件当日、ある人が集めたお金を持ってその場から離れたので、被告人は、「やはり持ち逃げするんだ。」と思ってその人について行きました。その人は、被告人に横領したお金を半分渡してくれました。被告人は、そのお金を持って路上生活に戻りました。このお話は、平成21年のことでした。

ある人と被告人は、生活保護者を集めて集団生活させ、生活保護費のほぼ全額を寮費名目で徴収するNPOの施設に入居していました。被告人らは生活保護費から5000円だけを小遣いとして与えられ、毎日無為徒食の生活をしていただけでなく、被告人のおいては寮のまかないも無報酬でやらされていました。いわゆる貧困ビジネスというものです。そのため、被告人は、生活保護者の生活保護費支給日に他人の生活保護費を施設に代わって集めていたある人と一緒に寮から逃亡し、その過程で上記のとおり事情を打ち明けていた関係から横領金の半分に少し欠ける金員を受け取って路上生活をしていたところ、事件から4年目に逮捕され起訴されてしまったのでした。横領したその人は今も行方不明です。ある人が横領する意図で通常の経路から離れた時点で横領の実行の着手があり、それと同時に実行行為は終了します。それ故、被告人がある人に付いて行った時点で横領罪は既遂となってしまっているので、その後のお金の分配は盗品譲受け等の罪にしかなりません。そして時効期間は3年なので、平成21年の事実を平成25年に起訴した時点で時効完成です。罪が認められても免訴判決となります。

捜査検事には、上記事情をきちんと調べてくれるよう申し向けましたが、自白とは言えない供述を自白と誤認し、本犯者もいないまま被告人のみが起訴していました。被告人は、横領された被害者の1人と交友があり、その人のアパートにも寝泊まりさせてもらっていました。その被害者は、警察の調書で「あの件はとっくに終わっていたはずですが、きちんと罪を償って戻ってきてほしい」というような内容の供述がなされており、全く同感です。この調書を読んで起訴検事は何も思わなかったのでしょう。発想が貧困です。最近こういう検事が多いです。ロースクールのいびつな教育が自由な発想を阻害しています。私は、上記経緯を踏まえ、無罪主張ではなく、免訴の主張をする予定です。新人の検事でもありませんが、時効及びそれにまつわる事実関係に対する配慮の欠けた事件処理は必ずしっぺ返しがくるということをこれから法廷できちんと教育して差し上げるつもりです。


2013-08-26 17:02  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

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