折り目の無かった逮捕状(湖東記念病院殺人冤罪事件の伏線) [法律エッセイ]
むかしむかし、近江の国に悪い刑事がおりました。刑事は、盗人を見ると殴ったり蹴ったりして捕まえていました。
あるとき刑事は逮捕状を署から持ってくるのを忘れていました。すると、偶然、盗人が刑事の目の前を通りかかりました。刑事はいつものように盗人を殴ったり蹴ったりして捕まえました。おまけに無理やり採尿して覚せい剤の検査までしました。
裁判になると盗人は、「刑事に殴られたり蹴られたりした。令状も見せられてないし、令状が出ていることも知らされていない。違法な逮捕だから覚せい剤の証拠は無効だ。」などと主張しました。
悪い刑事は、「四つ折りにした逮捕状を上着のポケットに入れていた。その逮捕状を取り出して盗人に見せた。盗人こそ嘘をついている。」と自慢げに言いました。
逮捕状は、盗人が起訴されると裁判所に差し出されることになっていました。逮捕状を見たことのある裁判官は、「では、その逮捕状を見てみよう。」と言いました。
法廷でその逮捕状が取り調べられることになりました。訴訟関係者がその逮捕状を見ると、逮捕状は、発付されたときのまま一筋の折り目もついていませんでした。
顔を真っ赤にした悪い刑事は、「思い出した。逮捕状は署に忘れていた。逮捕状は示さなかったが、盗人には逮捕状が出ていることをきちんと告知した。」と言い直しました。
しかし、悪い刑事の言うことを誰一人信用する者はおりませんでした。
その後、滋賀県警では、いざという時のために逮捕状は必ず4つに折り曲げるようになりましたとさ。
めでたし、めでたし。
2017-12-25 13:00
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